
当事務所がこれまでに担当した訴訟事件は膨大な数に上りますが、これらのうち先例的価値が高いとして判例誌等の刊行物に取り上げられたものも多数存在します。
下記はその一例ですが、常に受任事件について、「事件」のスジとスワリを見極め、依頼者利益の最大化・極大化を図るために柔軟・迅速な対応を旨としています。
本件は、取立委任のために会社から複数の約束手形の裏書譲渡を受けていた銀行が、同会社の民事再生手続開始申立後に、預かり手形の取立金を法定の手続によらずに期限の利益を喪失した債務の弁済に充当できるとの銀行取引約定の条項(以下「本件条項」という。)に基づき、再生手続開始後に取り立てた手形取立金を同会社の債務に弁済充当したところ、かかる弁済充当が不当利得を構成するとして、会社が手形取立金相当額及び民法704条所定の法定利息の支払いを求めて提訴した事案である。
本件では、民事再生手続における別除権である商事留置権の意義、別除権者による弁済充当と弁済禁止の原則との関係、各倒産手続間での均衡、本件条項の法的性格、商事留置権の留置対象等が争点となった。
第一審、控訴審がいずれも会社の請求を認容したのに対し、本最高裁判決は、会社から取立委任を受けた約束手形につき商事留置権を有する銀行は、同会社の再生手続開始後の取立てに係る取立金を、法定の手続によらずに同会社の債務の弁済に充当し得る旨を定める銀行取引約定に基づき、同会社の債務の弁済に充当することができると判示し、銀行の主張を認めて会社の請求を退けた。
民事再生手続における取立委任手形の商事留置権の取扱いにつき最高裁として初めての判断を示したものであり、今後の金融、倒産処理実務に与える影響は極めて大きい。
本件は、訴外A社に不動産を売却した原告が、債務不履行(代金不払)による契約解除を主張して、A社の買主たる地位を承継した被告に対し違約金の支払いを求めたのに対し、被告から、原告に対し、同売買契約は原告の解除以前に被告が手付金を放棄して解除済みであったとして、手付金と別途支払済の中間金の支払を求める反訴が提起された事案である。
本件では、被告の手付解除の有効性、即ち、被告の手付解除以前に原告が契約の履行に着手していたか否か、が争点となった。
本判決は、原告が、売買契約に基づき、対象物件に関する抵当権等の担保権及び賃借権等の用益権その他被告の完全な所有権の行使を阻害する一切の負担を消除する義務を負担していたところ、占有者との間で、建物の明渡時期等について合意したことをもって「客観的に外部から認識し得るような形で売買契約の履行行為の一部がなされたか、又は、少なくとも履行の提供をするために欠くことのできない前提行為がなされたと認められる」と判示し、本訴請求を認容し、反訴請求を棄却した。
本判決は、民法557条1項にいう「履行の着手」に関する事例判断として、同種事案の参考になるものと思料される。
本件は、いわゆる不動産の開発プロジェクト案件において、債権者(X)が抵当権に基づき土地について担保不動産競売を申し立てたところ、執行裁判所(東京地裁民事21部)が、同土地上に建物を建築していたゼネコン(Y)の未収工事代金を被担保債権として、Yの土地に対する商事留置権が成立することから、土地の買受可能価額が手続費用の見込額を超えないとして、民事執行法188条、63条2項、同条1項1号に基づき当該競売手続を取り消した(原決定)のに対し、Xが執行抗告を申し立てた事案である。
本決定は、Yが工事中に土地へ立ち入ることや完成後引渡しまで土地上に建物を保有することは、発注者の占有から独立した土地の占有ではなく、Yは発注者の占有補助者の地位を有するにすぎないなどとして、Yの土地に対する商事留置権を否定し、原決定を取り消した。
ゼネコンの土地に対する商事留置権の成否については争いがあり、最高裁の判断は未だに示されていない。本決定にならい、東京地裁民事執行センターは、これを肯定していた従前の運用を変更し、建物が未完成の場合にゼネコンの土地に対する商事留置権を否定するものとして取り扱うようになった(「さんまエクスプレス(第60回)」(同誌同号81頁))。
本件は、被告(Y)の社長秘書が、原告(X)との間で、Y名義を使用して、8か月余りの間に総額57億円にも及ぶ大量の新幹線回数券等の売買取引を行っていたところ、XからYに対し、そのうち未払代金相当額として8億2900万円余りの請求がなされた事案である。
Xは、①社長秘書に代理権が存在し又は表見代理が成立することを前提に、XY間に売買契約が成立する、②社長秘書の不法行為が業務の執行につきなされており、Yに民法715条の使用者責任が存在する、と主張したが、裁判所は、社長秘書に職務権限は認められず、取引総額が57億円に及ぶなど取引に不自然な点が多数存在しており、Yは社長秘書に職務権限がないことを容易に知り得たと認定し、Xに表見代理の「正当事由」はなく、また社長秘書に職務権限がないことを知らなかったことにつき重大な過失があるとして使用者責任も否定した。
本件は、民法715条の使用者責任に関して、相手方に重過失の存在を認めた数少ない裁判例の一つであり、東京地裁平18・10・17判決(東京地判平18・10・27判例時報1972号96頁 売買代金請求事件)とともに実務上参考になる事例である。
本件は、Y社が改正高年齢者雇用安定法の施行に伴い、定年を55歳から60歳に引き上げ、併せて55歳に達した 翌日から嘱託社員として55歳以下の従業員とは別の給与規程を作成し、これをXらに適用したところ、 かかる規程は就業規則の不利益変更に当たるとして、Xらが「本来支給されるべき賃金」との差額等の支払を請求 した事案である。
一審及び控訴審をとおして争点は、(1)本件就業規則の変更は不利益変更か、(2)本件就業規則の変更に合理性はあるかであった。一審は(1)について否定することなく、(2)について就業規則不利益変更法理に関する一連の判例を引用し、Y社が本件就業規則の変更をすることには合理性があると結論づけた。一方控訴審の判決はこれとは異なり、(1)について不利益変更該当性を明確に否定したものである。控訴審判決は進んで、新就業規則の内容は、当事者らの置かれていた具体的な状況の中で、労働契約を規律する雇用関係についての私法秩序に適合しており、法規範性を認めるための合理的な労働条件を定めているもので、必要最小限の合理性があったとした。
同種の事案で、問題となった就業規則の変更が不利益変更に当たらず、就業規則不利益変更法理の適用もないと判示した裁判例は少なく、さらに使用者と労働者との間の雇用関係を規律する労働条件の法的規範性について、必要最小限の合理性という判断基準を提示した点において実務上意義があると思料する。
本件は、旅行代理店である原告(X)が、旅行鞄の販売等を目的とする会社である被告(Y)の従業員と、平成15年
から1年3か月余りの間、Y名義で総額6億円を超える新幹線回数券の売買を行っていたところ、うち1億1000万円余りの支払いがなされなかったとして、(1)XY間の売買契約の成立、(2)表見代理の成立、(3)使用者責任、の主張 をして、Yに対し未払金の請求をした事案であり、使用者責任の成否が主な争点となった。
詳細は判決文に譲るが、裁判所は、Xが僅かな注意を払いさえすれば適法な取引でないことを知ることが できたのに漫然と取引を継続した等としてXに故意に準ずる程度の注意の欠缺があるとした上で、Xに保護を与える とすると、自らの重大な不注意によりYに不利益を生じさせ、そのことによって一方的に利益を得るという著しく不当な結果になり、公平の見地上、Xに全く保護を与えないことが相当と認められるとして、Xに重過失の存在を認め、Yの 使用者責任を否定した。
民法715条の使用者責任に関して、相手方に重過失の存在を認めた裁判例は少なく、実務上参考になる事例と いえる。
生命保険契約の災害割増特約及び傷害特約においては「不慮の事故」を直接の原因として保険事故が発生した 場合、死亡保険金等を支払う旨規定している。
本件は、急性心筋梗塞等と診断された被保険者が心臓手術を受け集中治療室で経過観察中に、経過観察のため装着された治療器具から大量出血し死亡したことが、上記「不慮の事故」にあたるとして生命保険会社に 保険金請求がなされた事案である。
判決は約款上疾病の診断・治療を目的とした医師の診療上の行為が不慮の事故から除外されている点について、原則として保険事故としての傷害を基礎に置く診療行為に関して発生した患者事故については保険事故の対象
とし、疾病に診断・治療を目的とした医師の診療上の行為から発生した患者事故については保険事故の対象から 除外することを定めたものと言うべきと判示し、請求を棄却した。医療機関で発生した患者事故について不慮の事故に該当するか否かの基準を示した点に意義があると思料する。
極度額110億円の連帯保証契約に基づく連帯保証債務履行請求について、不起訴合意、保証契約不成立、 通謀虚偽表示、心裡留保、錯誤、詐欺、信義則違反、権利濫用などの主張・抗弁をいずれも排斥し、全額の請求を認容するとともに、被保全権利である保証債務履行請求権の発生日と不動産売買契約日とが同日であっても、 詐害行為当時すでに被保全権利成立の基礎たる事実が発生し近い将来においてその成立が高度の蓋然性を もって見込まれる場合、その見込みどおりに債権が成立したときは、この債権は詐害行為取消権の被保全権利と なるとして不動産売買について詐害行為取消を認めた事例。
社会的に耳目を集めた事案の判決であるが、理論的には詐害行為取消権の被保全権利の発生時期についての 判示が同種事案の参考になるものと思料する。
本件は、新聞・書籍等を発行するXが、「広告予算申請書」と題する一見すると契約書とも見られる書面が存在することを根拠に、大手電機メーカーであるYとの間でX発刊の新聞等への広告掲載等の契約が存在するとして、 Yに対し、同契約に基づき金552万円余りを請求した事案である。
当時、総会屋等に対する利益供与事件により総務担当者が逮捕される事件が次々に発生し、Yも総務担当者が 逮捕されたことを契機に総務部を窓口とする違法と考えられる全ての取引の絶縁作業を行っており、本件はまさに このような絶縁作業の一貫に位置付けられる事案であった。
裁判所は、広告部ではなく総務担当者が交渉を行っていたなどXY間の交渉経過の特殊性や契約内容自体の 不自然さなどにより、その支払いの実態は賛助金の支払(贈与)に過ぎないと認定し、「広告予算申請書」が交付 されたからといって広告掲載等の契約が成立したとは認められないとしてXの請求を棄却した。
なお、判決は傍論で、仮に契約の成立が認められるとしても、同契約は株主に対する利益供与と推定されるおそれがあるため公序良俗に反して無効になると認められる認定している。
本判決は、正常な取引を装った金員の請求について、契約書と見られる書面が交付されているにも関わらず、その請求を排斥した事案として実務上参考になる事例といえる。
金融機関が、債務者が出店しているテナントの入居保証金返還請求権(毎年償還する約定あり)について質権の設定を受け、第三債務者であるビルオーナーから確定日付ある承諾書の差し入れを受けていたところ、国税局が 債務者に対する滞納処分として保証金返還請求権を差押え、ビルオーナーから償還金を取り立てたものの、 配当処分において、(1)金融機関が質権を実行するために要求されている手続を履践しおらず、質権の効力が当該入居保証金償還金に及ばない、(2)ビルオーナーの承諾書の記載から被担保債権が特定できないなどとして 金融機関に対する配当をなしとしたため、配当処分の取消しを求めて訴訟を提起。
東京地裁は、承諾書の解釈として質権の効力が入居保証金償還金に及ぶとして(1)の理由による処分を取り消し、 (2)については被担保債権が特定できないとして請求を棄却した。
事例判決ではあるが、換価配当処分についての裁判例の数少ない例。
銀行が行った融資について、債務者が融資判断の適法性を争い、銀行の貸出禀議書、元帳、担保評価書、 債権譲渡契約書等について、 文書提出命令の申立てを行った事案。
新民事訴訟法で改正された分野で当時は議論があったが、東京地裁は、貸出禀議書は自己使用文書に該当する、その余については必要性がないとして申立を却下した。
なお、貸出禀議書については、その後平成11年11月12日最高裁第二小法廷決定で、自己使用文書に該当する との判断が示され、決着した。
未発生の賃料債権について抵当権に基づく物上代位による差押えと債権譲渡とが競合した場合の優劣関係に ついての裁判例。
抵当権登記が債権譲渡通知よりも前に経由されていれば、物上代位による差押えが優先すると判示した。
その後、この論点については最判平10・1・30民集53巻1号1頁が、物上代位の目的となる債権が既に譲渡され、対抗要件を具備していても、抵当権者は自ら差し押さえて物上代位権を行使することができる旨判示し、決着を見た。
虎門中央法律事務所
東京都港区西新橋一丁目7番13号 虎ノ門イーストビルディング
03-3591-3281(代表)
©TORANOMON CHUO LAW FIRM. All Rights Reserved.